今回は夏が過ぎても油断しないよう注意喚起ができればと思い、「脱水症」と「リハビリ」について話をしていきたいと思います。
当院は地域の病院として様々な疾患の方が入院してこられ、年配の方も多く入院されています。 年配の方は頻尿や尿失禁の心配に対して飲水をひかえてしまうことや、食欲の低下、運動能力の低下、口の渇きを感じる機能の低下など様々な要因で「脱水症」になりやすい特徴があります。その為、夏が過ぎても毎年のように当院では「脱水症」で入院される方がおられます。
「脱水症」の様な内科疾患の治療では、身体がしんどいと「動きたくない」との思いが強くなり寝て過ごされる事があります。しかし内科の治療の間、動かずに過ごすと廃用症候群といわれる状態になってしまいます。廃用症候群とは安静状態が長期に渡って続くことによっておこる、様々な心身の機能低下の事です。この廃用症候群にならないようにするためにリハビリを実施していきます。リハビリを行うことで身体機能の低下を予防し、病気になる前の動作能力を目指します。
脱水症とは?
「脱水症」とは身体の機能を維持するために不可欠な体液が、不足している状態の事をいいます。
成人の身体の約60%が水分です。汗や尿などによって体外へ排出される量と体内に補給する水分量・塩分量が一定に保たれることでバランスは維持されていますが、体調不良や発汗によって体液のバランスが崩れてしまい脱水症状を引き起こします。
脱水症の状態を軽度・中度・高度に分けた場合、サインとして以下のような症状があります。
軽度:皮膚のかさつき、唇や口の中の乾燥、ボーとしている、めまいやふらつき
中度:頭痛、吐き気、血圧の低下、下痢、トイレに行く回数が減る
高度:意識を失う、痙攣を起こす
リハビリ事例を紹介
一般的に「脱水症」は上記のサインが無いか問診とバイタルサイン(血圧・脈・熱など)の確認が大切です。
めまい・ふらつき・頭痛・吐き気など自覚症状を確認できれば良いですが、私が担当した方は、認知機能が低下されており、なかなか上手く意思疎通ができない方でした。自覚症状を聞いても「元気です」と言われ、ベッド脇に置かれたコップには水で満たされた状態だったので水分を摂っているか確認しても「飲んでいる」と話をされるので、ご本人から自覚症状や水分補給量の確認が取れない状況でした。そんな時にはカルテからどのような治療をしているのか(点滴や服薬状況)、看護師から飲水状況や入院してからの状態の情報収集をします。その時にできれば、どんな種類の飲み物を飲んでいるのか確認ができるとより良いです。お茶の場合水分補給しても利尿作用があるので、排尿してしまい十分な水分が得られない可能性があるので注意が必要になります。
次に身体状況の確認をします。脱水を起こしている方は皮膚が乾燥しています。体の中の水分が減っているので当然身体の外側である皮膚も乾燥してしまいます。確認しやすいのは口の中や唇、手などになります。脱水を手で触って確認する方法には「ブランチテスト」、「ツルゴールテスト」というものが有名でよく使用します。
「ブランチテスト」とは、親指の爪を押して離した後に爪の色を確認する方法です。3秒程押した後、血行が戻らず爪の色が白いままだと脱水の可能性があります。
「ツルゴールテスト」とは、手の甲の皮膚をつまみ上げ離したあと、すぐに皮膚が戻るかどうかで判断します。2秒以上時間を要したら脱水を疑います。
以上のような評価をしてみてどれか一つが当てはまったら、「脱水」ということではなく総合的に考えて「脱水症」の状態を判断していきます。
リハビリで「脱水症」を治療する事は無いですが、安静に過ごされている間に体力が落ちてしまい、動けなくなるリスクがあるので早期にリハビリ介入し身体を動かしていきます。リハビリをする上で患者さんの状態を把握しないと、どの程度運動してもよいか判断が難しいのでフィジカルアセスメントが重要になります。フィジカルアセスメントとは問診・視診・触診・聴診・打診を通して様々な情報を集めて分析し、患者さんの状態を判断する事です。年配の方は気付いたら重症になっていることも少なくないので注意深く観察する事が必要です。
担当した患者さんは軽度の脱水症であったため、数日間で体調が戻り体力が落ちてしまう前に歩行練習が可能になり、無事ご自宅に戻られることができました。
長文となりましたが、最後までお読みいただきありがとうございます。
最近はTVなどで「水分を摂らないといけない」、「部屋の温度管理が必要」ということは情報として知られています。ただ「1日に水分をどれだけとればよい」、「脱水症の症状が分からない」等あると思いますので、1日の水分摂取量の目安と事例紹介で少し記載していますが「脱水症」の発見方法を載せてみましたので興味ある方は見てみて下さい。
★1日の水分摂取量目安★
1日に必要な水分量の目安は体重1kgあたり約40mlといわれています。
体重60kgの方は約2.5Lの水分が必要ということになります。
★脱水症の発見方法★
①握手する
手が冷たいと疑いあります。
脱水症になると血液は重要な臓器に集中します。結果として手足に血液がいかず冷たくなります。
②舌を見る
乾燥していたら注意。
脱水症になると口の中のツバが減ってしまいます。
③親指の爪さきを押してみる
赤みが戻るのが遅かったら注意。 指先は血管が細いので変化が出やすいです。
④皮膚を摘まんでみる
摘まんでから3秒以上摘まんだ形の時は注意。
皮膚には水分がたくさん含まれていて弾力性がありますが、脱水になると水分が減り弾力性も低下します。
⑤脇の下を見てみる
乾燥していたら注意。
脱水症になると汗が出なくなり、脇の下が乾燥しています。
参考文献:日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.32 No.3 2017
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社会医療法人有隣会 東大阪病院
リハビリテーション部
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