今回は先日、当院の独自共育システムの作業療法士必須推奨プログラムにある「生活行為向上マネジメント MTDLP」の研修を行ったので、そのことについて書きたいと思います。
【生活行為向上マネジメント MTDLP とは?】
生活行為向上マネジメント(MTDLP)とは、作業療法を“見える化”したツールです。
作業療法士協会が、「30㎝のものさし」として開発した作業療法士の頭の中が分かる情報共有の為のツールです。作業療法士であれば知らない人はいないはず。
この生活行為向上マネジメント(MTDLP)は、新人でもベテラン療法士と同じような治療計画が立てられて、情報が伝えやすいとされるものです。
今までも、作業療法では、対象者の評価を行い、対象者やご家族の希望にそった生活目標を立て、支援を行ってきました。しかし、実際に行われる作業療法の中には、生活目標と支援内容とが合致しにくく、対象者やご家族などが、作業療法の目的を捉えにくい側面もありました。
生活行為向上マネジメント(MTDLP)では、作業療法で立てた生活目標や支援内容の一連の流れについて、書式にそって記載していきます。生活目標と支援内容を書式化し、作業療法の流れを見える化することによって、対象者、ご家族などに、作業療法の目的を共有しやすくしたツールが、生活行為向上マネジメント(MTDLP)なのです。
作業療法を「見える化」したことによって、対象者を支援する他の医療・介護スタッフや地域で対象者を支える方々とも情報を共有しやすくなり、チームで支援をしていくことが期待できます。
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【生活行為向上マネジメント MTDLP の実際は?】
生活行為向上マネジメント(MTDLP)は、作業療法士にとって素晴らしいツールです。
しかし、現実は、当院に限らず、生活行為向上マネジメント(MTDLP)を使用している作業療法士は少ないのではないかと思います。
当院ではリハビリテーション部(急性期)の新人指導で担当患者について整理するときに使用しています。
(日本作業療法協会 作業と生活行為(用語解説)から引用)
作業療法士必須推奨プログラムでは、生活行為向上マネジメント(MTDLP)について、
①実際に使用した症例報告
②概要
③実際の使用手順
と3工程に分けて、3部構成で研修を行いました。
今回の参加者は1年目と2年目の作業療法士でした。
③で実際に患者さんの状態についてアセスメントシートでまとめてみると、全員に共通していたことが、経験年数が浅いこともあり「予後予測が立てられない」ということでした。また弱みについては書く事が出来るのですが、「強みを書き出すのが苦手」な療法士もいました。
作業療法士は患者さんや利用者さんにとって、必要な作業ができるように可能化を目指す専門職です。
そのため、患者さんや利用者さんに喜ばれる作業療法士になるには、弱みの克服だけではなく、強みとなる残存機能をどのように活かしていくのかを考え、提案・実践できるか否かが非常に重要になってきます。
現実問題として、国からは診療報酬改定の度に、入院期間の短縮を迫られています。
作業療法士の私たちは「予後予測をもとに、弱みの克服だけではなく、強みとなる残存機能をどのように活かしていくのか」を考え、提案・実践することで、国からの要望である入院期間の短縮に貢献し、患者さんや利用者さんのQOL向上「最大限の機能回復」「最大限の能力の活用」「社会参加への復帰」にも貢献できると思います。
「予後予測をもとに、弱みの克服だけではなく、強みとなる残存機能をどのように活かしていくのか」を考え、提案・実践できるか否かは、予後予測をもとにした、
入院期間を考慮しながら身体機能へのアプローチ
動作訓練を行い動作の質を高めるアプローチ
環境を変え、やりやすい方法を提案するアプローチ
患者さん自身を教育するアプローチ などに繋がります。
予後予測が立てられないとアプローチの選択の幅が少なくなってしまいます。
作業療法士必須推奨プログラムでは、これを若い作業療法士にどう伝え、若い作業療法士がアプローチに活かしていけるようにできるかがポイントではないかと思っています。
その点で、生活行為向上マネジメント(MTDLP)の手順通りにまとめていくと、どの部分で悩んでいるのか、どの部分を考えるのが苦手なのかが理解しやすくなります。それを今回の研修の講師を務めてみて改めて知ることができました。
これからも生活行為向上マネジメント(MTDLP)の研修だけでなく、新人指導の場で生活行為向上マネジメント(MTDLP)を使用し、患者さんの治療に役立てられればと思っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
<文責>
作業療法士 O
企画部:アベ
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