今回のブログでは

言語聴覚士（ST）の仕事

についてお話しさせて頂きたいと思います。

STの役割のなかには、患者さんにあった食事形態の調整や、口腔嚥下機能の向上といったものがあります。患者さんの口の動きや食物を飲み込む際の喉の動きを評価し、安全で適切な食事形態を選択する、そして食事をしっかりと食べられるように口腔嚥下機能訓練を行い、動きの改善を目指します。言い直すと、食べやすい食事の形態を考える事、口や喉の動きを良くする事といったところでしょうか。

当院のSTも上記に取り組んでいます。

訓練時間内には口腔機能訓練といって口や舌を動かして頂く訓練を行います。

同時にこれらを動かす筋肉が固くならないよう首や肩のリラクセーションも行っています。
また、訓練時に実際の水分や食べ物（訓練用）を用いることもあります。

水分で咽やすい方には、飲み込むタイミングで水分が喉に流れるようにその速度を調整するためにトロミという物を付けさせて頂いていますが、この濃度の調整もSTが行っています。

しかし、訓練場面だけでは実際の食事時の口の動き・喉の動きは分かりません。

食事中の自然な動作というものは、別の場面ではなかなか観察しにくいものです。

みなさまの中には、言語聴覚士の人が食事中に部屋にやってくるのは何故だろう、と思われている方もいらっしゃるかもしれません。

STはリハビリの訓練時間以外にも、患者さんの食事の時間にお部屋を訪室して食事場面の中での評価を行い問題点がないかどうか、現在の食事形態が本当に患者さんにとって適切なのかどうかを確認しています。

食事を見られるのは気になる、という方もいらっしゃいますので（もちろんそうですよね）、食事中にお部屋をお伺いする際はその意図をお伝えした上で、患者さんの食事の妨げにならないよう、その立ち位置には気を付けています。STとしても自然な食事場面の観察・評価を目的としていますので、その点には十分注意しています。

※ちなみに当院では患者さんの食事評価を行う際、看護師や病棟職員に分かりやすいように上記の用紙を用いています。この用紙がありましたら、お食事時にSTがお伺いさせて頂きます。

しかし、STの介入中に気になる点が見受けられる際には了承を得て声をかけさせて頂くことがあります。
食事中の声かけには、喉に食物や水分が貯留していないかどうかを確かめる目的があります。もちろん、食べにくさがないかどうか、喉に詰まる感じがないかどうかを伺う為でもありますが、飲み込んだ後に声をかけて上記が原因による声の変化がないかどうかを確かめています。
飲食物が喉（声帯付近）に貯留している場合、うがいをしている時のような湿った声【湿性嗄声（しっせい・させい）】になる事があります。声帯付近に食物や水分が貯留していると、本人の意図しないタイミングで貯留物を飲み込む事があり、咽やすくなってしまいます。
そのため、食物を飲み込んだ後にこうした嗄声が聞かれる際には貯留物をなくすために咳払いをして頂いたり、もう一度ごくんと唾を飲み込んだりしてもらう事があります。また喉の貯留物をなくしてから食事を続けてもらうように患者さんにお伝えしています。

こうして、観察・評価と同時に気になる点や気を付けていただきたい点を患者さんや御家族にお伝えすることもSTの職務のひとつです。ご自身で“食べ方”を意識して頂くだけでも咽せの予防となります。

さて、長々とお話しをさせて頂きましたが、STは“糖尿病の方や高血圧の方にどういった食事が良いのか”という質問にはお答えできません。これらの質問に対しては栄養士から栄養指導という形でお話しさせて頂いています。

　“食べにくそうにしているけれど、どういう形が食べやすいのか”

　“お茶でよく咳をしているのは何故か”

　“どうすれば咳を抑えられるか”

こういった質問にお答えさせて頂くのがSTです。
その方一人ひとりにあった食事の形態を評価し、安全にお食事を楽しんで頂くため、我々が存在しています。

気になる事がありましたら、どうぞお気軽にご相談下さい。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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文責：言語聴覚士N