リハビリテーション部管理職ブログチーム作業療法士Kです
今回は、今まで担当させていただいた患者さんを振り返り
事例報告させていただきます。
がん・緩和ケアでのリハビリテーション事例報告
タイトルをつけるなら
「家族の揺れ動く不安に寄り添い
自宅退院に繋がった一症例」
30歳台 男性 悪性腫瘍の方です。
今まで数回の手術、放射線、化学療法を頑張った90㎏近くの体重の患者さんで、お母さんが自宅で介護を続け、自宅での介護が困難となり入院されました。
お母さんは
「服を着せるのも時間がかかり、トイレ介助は本当に大変でした。家では難しい」とのことで入院を決めたそうです。
本人さんは、特に希望や訴えはありませんでした。
入院時より、覚醒状態にムラがあり、覚醒が良い時は声掛けから起き、車椅子へ軽介助で移れ、職業歴などを話して下さいました。
ただし、覚醒が悪い時は体を揺さぶっても、いびきをかいて眠られたままでした。
急変のリスクも高く、当院の急性期病棟に1週間ほど入院され、緩和ケア病棟面談を行い、緩和ケア病棟に転床となりました。
入院支援カンファレンスでは、母親の介助負担が大きいため入院加療となり、自宅での介護は困難で、病院での看取りになるだろうと、家族の覚悟も含め、医療スタッフは話し合いました。
ただし、お母さんは病院へのお見舞いを重ねていく中で気持ちが変化されました。
「やっぱり最後までみてあげたい」
「この前来たとき、おばさんと言われてショックだった」
など、認知・高次脳機能低下から、母親の存在も曖昧になる非常につらい経験をされました。
しかし、お母さんは連休での外泊を希望されました。
その連休期間中であれば家族も増え、介護を手伝ってくれるとのことでした。
早速、多職種カンファレンスを行い、患者さんが自宅で数日間過ごすための具体的な方法をお母さんと共有し、2泊3日の外泊を実施しました。
結果は、大成功でした♪
お母さんは「大好物のうなぎを食べてくれました」と喜んでおられました
この経験から、お母さんは「やっぱり後悔したくない」との想いが強くなり、自宅退院を希望されるようになりました。
しかし、希望はされたものの
「家で介護はできますかね?やっぱり無理ですかね?」
と不安になられる時もありました。
急遽、合同カンファレンスを開催し、
訪問看護師さんにもご参加いただき、
急変時の対応について 話し合いました。
お母さんの
「長い闘病生活、最後まで見守ってあげたい。」
「今は、動くことができないから
ベット上での介護ならできそうな気がする」
「やれることはやってあげたい」 な ど
母親の介護体験を参加したスタッフで傾聴し、
お母さんの覚悟を医療スタッフ全員で確認しました。
そして、合同カンファレンスから4日後、無事、自宅退院となりました。
リハビリテーションは、患者さんがベット上で全介助のため、
・四肢の拘縮予防での関節可動域訓練
・座位保持訓練
・ウォークマンでの音楽鑑賞
・食事動作訓練
・トイレ動作訓練
・福祉用具の検討
・整容での髭剃り
・臥位での褥瘡予防のためのポジショニング で介入しました。
これに加えて、私自身はお母さんの話を聞き、お母さんが喜ばれるであろう介入方法を意識してお伝えするように取り組みました。
訪問看護師さんより、
「今回は、訪問リハビリの適応ではないかもしれないけど、リハビリ療法士さんの関わりは病気ばかりに目をあてないところが良いと思います。そこが、QOLの向上に直結すると思うし、患者さんはリハビリ療法士さんとの関わりを楽しみにされていますよ。今後も頑張ってください」
とありがたいお言葉をいただきました。
患者さんの頑張り、お母さんの覚悟、入院支援カンファレンスで話し合った事と真逆の結果、訪問看護師さんからの言葉など、非常に印象に残ることが多い事例でした。この患者さん、ご家族を通じて、とても貴重な経験をさせていただきました。
(写真は、アドバイスをいただいた附属クリニック看護副師長さんと私です。)
後日談ですが、退院して4日後の訪問診療中にご家族が見守る中、息を引き取られたそうです。
長い文章になりましたが、読んでいただきありがとうございました。
文責:作業療法士K
*無断転載禁止
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