運動器エコーとは?
近年、インターネットや勉強会で多く“運動器エコー”という言葉が用いられています。
言葉の定義はないのですが、超音波画像診断装置(以下エコー)を用いて、症状が疑われる運動器(筋、関節、靭帯など)に、プローブと呼ばれる端子を当て、診断、評価や治療などを行うことを言います。
エコーのプローブを当てるとその組織がどのような状態であるか画面上でリアルタイムにみる事ができます。
運動器エコーの対象疾患
対象は幅広く、運動器疾患(骨折、手術後など)、脳卒中疾患(脳出血、脳梗塞、脳塞栓など)を問わず、運動器(筋、神経、靭帯など)に機能障害や何らかの症状が出現している患者さんが対象です。
運動器エコーのメリット・デメリット
エコー装置を使用する最大の強みはMRI、CT検査などとは違い、検査機器が持ち運びやすく、対象組織がどのように動いているか、リアルタイムで観察できる点です。
また、画面に今の患部の状態が映し出されるため、患者さんと患部の現在の状態を共有できます。
患者さんへ「この筋肉が厚くなるように動かして下さい」とお伝えすると、画面を見ながら筋肉を厚くするように試行錯誤され、動かし方をご自身で見つけ出せます。
ご自身で動かし方を見つけ把握されることで、その後の自主練習が正確にできるようになります。
加えて、より正確な触診が可能となります。
エコー画面を見ながら触診することで筋と筋の間を正確にさわれます。
また、神経を触診する時には、神経自体を直接圧迫し過ぎると痛みを誘発しますが、神経周囲に対してアプローチすることで痛みを減らすことができると考えております。
この技術はエコー画面を見ながらでないと難しいのではないかと考えています。
エコー検査がMRI検査、CT検査に及ばない点は、1画面で撮影できる範囲が狭い点です。
また、エコーは、骨が表面にあると超音波が届きにくく、それより深い場所が観察できないという短所があります。
患者さん・ご家族へのメッセージ
エコー検査で得られた結果から、医師・検査技師・療法士で、痛みの原因・関節が動きにくくなっている原因を考え、患部が少しでも早い回復に繋がるように努めています。
また、エコー検査は非侵襲といい、痛みを伴わない検査ですのでご安心ください。
リハビリ療法士へのメッセージ
触診を行っている時に「本当に思ったところが触れているのか」、治療を行っている時に「ターゲットとしている筋に収縮は起きているのか」、「患者さんが痛いと言っているけど、そこの組織はどのような状態なのか」と不安や疑問に思ったことはありませんか。
エコー検査を行うことで、これらを解決する糸口が見つかります。
当院には森ノ宮医療大学で開催されているエコーを用いた勉強会(RUSI)のアシスタントが3名在籍しています。
また、院内には”エコー班”というチームがあり、業務前後にエコーを用いて勉強会を行っています。
加えて、学んだ内容を院内で勉強会(股関節、膝関節、肩関節に対してエコー検査をしながら触診をする)を開催し伝達しています。
エコーを活用したリハビリテーションが世間に広がることを目標にし、日々活動しています。
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士問わず、エコー検査初心者であっても、興味ある方、一緒に勉強していきたい方は大歓迎です。
症例1
仮説:上腕二頭筋にストレスが集中しているか?
上腕二頭筋長頭腱周囲にあった低エコー像は減少しました。
痛みもほとんどなくなったとのことでした。
症例2
上記の変化がありました。
膝関節の関節可動域は10日間で25°拡大しております。
症例3
6か月前に歩行困難になるほどの左膝痛あり。
レントゲン撮影するも異常なし。
安静と筋力トレーニングするように指示あり。
生活に支障ないためリハビリ継続せず、様子をみていた。
再度、疼痛出現し、跛行が著明となり、リハビリ再開となる。
担当療法士より、当院のエコー班に相談あり。
主治医協力の下、運動器エコー評価を実施した。
左膝が痛い。
歩く時に痛くて体重をかけられない。
数か月おきに痛みが出現する。
膝蓋下脂肪体に圧痛(+)運動時痛(+)
炎症状態であると考え、負荷を減らし、アイシングを取り入れた。
歩行時の疼痛が減少してきたため再々評価を実施した。
中止していた4運動療法を再開した。
⇒リハ後に出現していた疼痛の増悪はなく、荷重時に認めていた疼痛はなくなった。
現在は数か月おきに繰り返していた疼痛が再度出現しないように、リハを実施している。
症例4