以前、初期評価のテンプレート作成についてお話ししました。
前回の記事: 摂食嚥下障害初期評価の統一化への取り組み
今回は初期評価のテンプレート作成に至るまでの経過についてお話しできたらと思います。
前回のブログでは個々のカルテに記載内容が異なるため、評価項目や経過などの情報が第三者に把握しにくい状態になっていたとお伝えしました。カルテに最低限記載する内容を統一することで情報が集約され見やすくなり、情報収集が容易になっています。経過も分かるのでサマリー作成や症例検討などで情報の整理に活用できます。
では、どのように現在のカルテ運用に至ったのかお話ししたいと思います。
言語聴覚士(ST)内で以下のような意見がありました。
・カルテでの情報収集に時間がかかる。
・代診の際に書類を作成するのが手間。
というのも、言語聴覚士(ST)一人あたりの担当患者数が15人~20人近くあり、カルテ記載や代診時の申し送りに時間が限られていたからです。
ミーティングではこのような問題点を解決するために評価のテンプレートとなるものを作成することになりました。
大まかな手順は次の通りです。
①言語聴覚士(ST)内で必要な評価項目の意見を募り、テンプレート作成の代表者を決める。
②代表者が意見を集約し、基盤となる評価表を作成する。
③作成後、回覧で全員に最終チェックをもらう。
④評価表を臨床場面で試験的に運用する。
⑤試験運用後、再度言語聴覚士(ST)内で不具合や過不足などの意見を募り、評価表の見直しを行う。
⑥代表者が意見を基に改訂版の評価表を作成する。
⑦再度、回覧する。
⑤以降は③~⑤を見直しの意見が出なくなるまで繰り返すとしました。それに至るまでは2~3か月程度要したと思います。現在は安定して運用しています。
メリットとしては
・カルテの質が上がったこと
・記載時間が大幅に短縮したこと
・情報収集
・代診の申し送りが容易になったこと など多々あります。
デメリットは安定した運用まで時間と労力がかかったことくらいで、運用してからの『デメリットはなし』です!
新しいものを創り出すためには今お伝えしたような工程が必要でした。
例えば商品開発の場合、
ニーズの把握・問題の把握→プラン立案→作品の作成→運用→結果→改善点の検討・見直し→再度、試作品の作成→再運用
というように、見直しをかけながらより良いものを作り上げていくのではないでしょうか。
私はこの一連の過程が『リハビリにも通じている』と今回のテンプレート作成で考えることができました。
初回面接→スクリーニング評価→機能別評価(→掘り下げ評価)→問題点の抽出・絞り込み→訓練プログラムの立案→機能訓練実施→再評価→訓練プログラムの見直し など
これを上記のテンプレート作成の流れや商品開発の話と比べてみると良く似ていることに気づかれるかと思います。さらにリハビリは到達目標(ゴール)とゴールへの到達期間を求められる職種でもあります。今回のテンプレート作成のプロセスでは各工程において期間も視野に入れながら進めていました。急性期病棟では在院日数にも限りがあるので、ゴールと期間が曖昧なままリハビリをしていると十分に評価できずに、患者さんの本来の能力を引き出せないまま退院させてしまうことになりかねません。よって、患者さんやご家族、他職種に迷惑をかけることになります。
話がそれてきましたが、今回テンプレート作成に取り組んで、日々のカルテに情報を集約するだけで簡単に情報収集が出来るようになることを学びました。また、問題点・目標・ゴール設定の重要性を再認識できたと思います。新しいことを始めるにはかなりの労力がかかると思います。しかし、今後のために業務内容の簡易化を図ることで短時間・少人数での運営ができるようになったと考えております。これをご覧になっている方々も仕事・日常生活で負担となっていることがあると思います。しかし、今一度業務を見直してみると事務的な作業効率が良くなり、少ない人数でもより多くの患者さんの臨床に携わることができるのではないでしょうか。就業時間中、より多くの時間を患者さんのために消費できるようになれば、質の良いリハビリを提供できると考えています。
※無断転記禁止
文責:言語聴覚士S
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