今回は、先日行った回復期リハビリテーション病棟での『看護部・リハビリ部合同勉強会』についてお伝えします。
その看護部・リハビリ部合同勉強会は「ポジショニング」をテーマに開催しました。
ポジショニングをテーマにした理由
当院の回復期リハビリテーション病棟の患者割合は、脳血管障害の方が3~4割、運動器障害の方が6~7割です。患者さんの年齢層は70~90代の方が多いです。そのため入院の原因となる疾患だけでなく、入院の時点で複数の疾患をお持ちの患者さんも多くいらっしゃいます。
その中でも特に脳梗塞や脳出血といった全身的に身体が動かせなくなる病気になられた患者さんはご自身で身動きをとれないため、ベッド上での生活がどうしても多くなります。
ベッドで過ごす時間が長くなると、床ずれ(褥瘡)や関節の拘縮などが出現しやすくなるため、予防策が必要です。
その予防策の一つが「ポジショニング」です。
ポジショニングの目的は
動けないことにより起こる様々な悪影響に対して、
•予防対策を立てること
•自然な体軸の流れを整えること
•現状維持から改善に役立つ体位の管理を行うこと です。
もちろんポジショニングの目的や方法を知っていれば、すぐに患者さんにあわせた対応がその場で可能ですが、知識や経験がなければ、何が良くて何が良くないかわからないため、患者さんに良いケアを提供することはできません。
ということで、床上で過ごす患者さんに関わることが多い看護師さんや介護士さん向けに以下の講義を行いました。
•ポジショニングとは?
•ポジショニングの対象
•ポジショニングをしなかったら
•ポジショニングの基本的な考え方
•体位変換の実施時間
•ポジショニングの具体例
ポジショニングの基本的な考え方
一部講義内容を紹介します。
ポジショニングの基本的な考え方についてです。
ポジショニングを行わなければ、体の特定の部位に大きな圧力がかかります。
その特定の部位は、頭部・背中・仙骨・踵などです。
では、どうすれば体を自由に動かせない人が安楽にベッド上で長時間過ごせるのか…
ポイントは、「点ではなく面で支える」ということ。
意外かもしれませんが、寝ている時の寝具との接地面は、「点」となっていることが多かったりします。具体的には、突出した骨で支えているということです。少しイメージしてみて下さい。足つぼマットの上に長時間立つのは、結構というかすごくつらいですよね。
ベッド上での「点」で支える状態というのは、まさにそのような状態です。
「点」で支えている状態を、ポジショニングを行うことで「面」で支えられるようにできます。つまり、体と寝具のすき間を埋めていくことで圧の分散を図っていくわけです。それがポジショニングの基本となります。「面」で支えることで、体の特定の部位にかかる負荷を軽減できることはもちろん、体がリラックスしやすい姿勢となるため筋肉のこわばりも軽減することが期待されます。
今回は経験年数が浅い方もいらっしゃったため、上記のようにポジショニングの基本の「き」を中心に講義させていただきました。
勉強会後のアンケートでは、看護師さんから「患者さんを観察する視点が広がりました」といった感想もいただきました。
哲学の父であるソクラテスは「無知の知」という言葉を残しています。
その意味は「無知であることを知っていること」です。言い換えると、「知らないことを知らないことは罪深いこと」と解釈することもできます。
われわれ医療職は知らないことを知っていくことで日々成長し、患者さんへも質の高い医療を提供することができます。逆を言えば、知らないことばかりだと患者さんの観察すら十分にできないということです。
今回の勉強会を開催することで、私自身も観察眼のブラッシュアップに繋がりました。
そして何より、今回の勉強会に参加された看護師さんが、患者さんを観察される時にいつもは見えないことが新しく見えるようになったと感じていただければ、勉強会を開催した意味もあったと思います。
今後も病棟と連携を図りながら、自分の大切な人に入院を勧めることができる病院になるよう他職種で連携していきたいと思います。
最後に、令和4年1月から実施されていたまん延防止等重点措置は、先日3月21日をもって全ての都道府県で終了しました。自粛生活に疲れ切っている方も多いのではないでしょうか。
当院では、終了後も引き続き感染拡大の防止のために、マスク+フェイスシールドの感染対策で日々診療にあたっていきます。
みなさんも「うつさない」「もらわない」をモットーに感染対策を心掛けましょう。
※無断転載禁止
文責:回復期リハビリテーション課 PT石原
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