今回は高次脳機能勉強会で開催された
半側空間無視:unilateral spatial neglect(以後USNと記載)
について一部を抜粋して報告させて頂きます。
半側空間無視の近年の動向としてCorbettaらの報告した病態を中心に話が進められ、
・USNは受動的注意と能動的注意による注意ネットワークの障害
・その病態の根幹には受動的注意の低下がある
というものでした。
受動的注意とは予期しない出来事、新しい方向に注意を向けること、突然現れた変化やアクションに対して自分の意思とは関係なく注意が向くような注意の様式をさします。(例:声をかけられる)
能動的注意とは意識的に向けている注意のこと、ある課題(行うべきこと)を遂行するために自ら積極的に意識し、集中するような注意の様式のことをいいます。(例:パソコンに集中する)
能動的注意には、背側経路が関わっているとされ、これは、前頭眼野-上頭頂小葉・頭頂間溝によるネットワークです。
受動的注意には、腹側経路が関わっているとされています。
これは、中・下前頭回-下頭頂小葉・上側頭回によるネットワークです。
受動的注意と能動的注意では、これら2つのネットワークにより、意識的に注意を向けたり、切り替えることが自然と行えるようになっているのです。
続いてUSNの評価と治療について説明がされましたが、ここで興味深かったのが軽微な無視症状のある群では課題実施前の段階で前頭領域での活動が高く、その活動量は視線の偏りと関連がある。これは受動的注意を能動的注意で代償していることが考えられ、無視空間に注意を向けすぎる事で前頭機能の過剰な活動が生じ結果として疲労を招く原因となる可能性も考えられるとの点でした。
またUSN症例では注意の問題も抱えており、注意が働くためにはワーキングメモリの働きが重要ですが、脳卒中患者さんのワーキングメモリの使用のイメージとして姿勢制御の割合が大きく注意の割合が小さくなってしまう。それによりコケないように歩くことに集中すると左側をぶつけたりする患者さんを多く見かけます。
よってワーキングメモリの負荷を意識する必要がある。との事でした。
高次脳障害と聞くと苦手意識がある私ですが、患者さんの評価のなかで、どんな注意ネットワークの問題が起きているのか病態を把握し、それに応じた治療戦略を選択、実践することの重要性を教えて頂きました。
また講師を務めて頂いた理学療法士Iさんは翌日Pussingの勉強会も行ってくださいました!!
「趣味程度のものですから・・・。」とおっしゃったIさんですが
英語の文献報告も多く内容が充実しているのに、要点がすごくわかりやすく勉強になりました。
なにより労力を惜しまずスタッフに共有して下さる心意気にも感謝でした。
ありがとうございます。
また来月のブログも楽しみにして下さいね。
文責:理学療法士 Y
*無断転載禁止
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