[こんな時は救急外来へ!!症例別Q&A]
手首の骨折(橈骨遠位端骨折)について
橈骨遠位端骨折とはどのような骨折ですか?
転倒や転落による受傷がほとんどであり若年者から高齢者まで、幅広い年齢層に認められます。
手のひらを着いて転んだ時に、前腕の2本の骨のうちの橈骨(とうこつ)が手首のところ(遠位端)で折れる骨折のことを言います。若年者ではスノーボードなどのスポーツや交通事故が多く、高齢者(特に閉経後の中年以降の女性)は骨粗鬆症などが基盤にある場合、軽微な転倒でも発症することがあります。いずれの場合も、前腕のもう一本の骨である尺骨の先端やその手前の部分が同時に折れる場合もあります。
転倒した時に手をついて受傷するのが、手首の骨:橈骨(とうこつ)です。
橈骨遠位端骨折は年齢による違いはありますか?
橈骨遠位端骨折は、年齢により大きく3つに分けることができます。
子供の骨折、青壮年の骨折、高齢者の骨折です。
当院で多い青壮年の骨折、高齢者の骨折について以下に説明します。
- 青壮年の骨折:
高所からの転落やバイクの転倒などで高エネルギー損傷が多いのがこの年代の特徴です。 したがって、骨折のずれ(転位)が大きかったり、関節内に骨折が入ったりして、手術を受けないと後遺症が残りやすい骨折の頻度が多いです。
また、手関節の靱帯に合併損傷がある場合もあります。 - 高齢者の骨折:
高齢者に多い骨折の1つです。高齢になるにつれ骨が脆くなること(骨粗鬆症)に関係しており、若い時には骨折しない程度の力でも、手首の骨は折れてしまいます。高齢者のほとんどは、玄関や布団の縁につまずいたといった程度の転び方で骨折をしています。
骨折のずれ(転位)が少なければギプス固定や装具で治療します。 骨折部が大きくずれているような場合や関節内に骨折が入っている場合には手術が選択されます。
橈骨遠位端骨折は骨折の仕方による違いはありますか?
分類はいくつかあります。今回は骨折のずれ(転位)による分類について説明します。
いずれも手術などで骨折部位の固定をしてリハビリテーションを行っていきます。
橈骨遠位端骨折をするとどんな症状が出ますか?
転倒や転落後に手首の付け根に痛みが出現し、手首を曲げることや手のひらを返す運動が出来なくなります。また腫れと熱をもちます。しびれが出るなどの症状の場合もあります。手の向きがおかしく感じたとおっしゃる方もおられます。
そういった症状が出ればすぐに病院に受診して下さい。
病院でX線検査やCT検査による診断を受け正しい治療に進むのがなにより大切です。
もし骨折したまま放置すると骨が変形したまま固まり、痛みだけではなく痺れや動かなくなるなど2次的障害が出る可能性があります。そのため骨折は早期に診断し治療に進みしっかり治すことが大切です。
橈骨遠位端骨折の発生率は?
40歳未満では、男性の発生率が女性よりも1.4倍多いとされ、40歳以上では女性が男性より多くなり、女性の発生率は加齢に伴ってほぼ直線的に増加すると言われています。60歳以上の女性の14.5%はその後の生涯のなかで橈骨遠位端骨折を生じることが報告されています。
橈骨遠位端骨折の治療とは?
原則として、関節外骨折やズレのない骨折は、ギブスなどの外固定による保存療法が行なわれます。ズレを伴う骨折の場合は、手術による治療が必要とされます。
手術による治療の場合は、当院では手術の前の日から術後の生活指導や自主トレ指導を実施しています。また、高齢者には認知機能の検査を実施させていただいています。術後翌日より実際に手を動かしたり、許可された範囲の生活上の動作を練習することができ、生活上の支障を最小限に抑えることができます。
橈骨遠位端骨折の術後はどれぐらい動かしてよいのでしょうか?
尺骨骨折を合併していない場合は、当院では手術の翌日から食事や整容等で使用を許可されます。ズボンやパンツを上げ下ろししたりもできます。
お風呂も傷口がぬれないようにしていただければ入って大丈夫です。ただし、骨折した手で体を支えたり、重いものを持ったりすることはしないように指導をさせていただきます。
橈骨遠位端骨折のリハビリではどのようなことをしますか?
手術前は怪我していない手の握力や関節の角度測定などの評価を行います。人により力や関節の曲がりに差があるため患者さんの状態を把握し目標を決めるために行います。また術後の注意点や自主トレーニングについて説明します。
そのため初めのリハビリテーションの目標は腫れをとることです。手術前に腫れを取り易くする手の運動について説明し、手術翌日より一緒にその運動を行ないます。
また同時に手を付くことと重たいものを持ってはいけないなどの生活上の注意点について説明します。
手術後問題がなければ、手術翌日~2日ごろには退院し、外来でリハビリに通って頂くことになります。他院でのリハビリを希望される場合は、希望に沿って対応しています。外来リハビリテーションでは術後約8~10週での終了を目指してリハビリテーションを進めていきます。どの時期にどのような練習を行うのか、各時期の目標などをまとめたものがあり、それを基準に訓練を進めていきます。骨折や手術後の状態が異なるので、主治医と相談しながら訓練を実施していきます。
橈骨遠位端骨折のリハビリで注意していることがありますか?
「手術をすればそのうちに治ると思っていたのに…」ということを患者さんからよく伺います。個人差はありますが、術後は腫れたり、動かしにくい時期があります。痛みやしびれが出ることもあります。何人もの患者さんを診ていれば、問題ない事はわかるのですが、当事者の患者さんは、初めての事ですし、「痛い」=「よくないことが起こっているのでは?」と心配になられたり、使うことが怖くなる場合があるのです。
また、訓練も大切なのですが、訓練以外の時間もとても大切と考えています。ご自分でもしっかり動かしていただけるように、時期ごとに必要な宿題(自主トレ)を出させていただきます。リハビリ以外にご自分でも注意しながら練習したり、日常生活で使用していくことが手の機能を維持したり、改善するには必要なのです。自宅で困らないように生活上の動作は、できるだけ具体的にどうすればいいかをお伝えするようにしています。