よくあるご質問(FAQ)
腎臓病や透析治療に関する疑問、質問についてお答えするQ&Aコーナーです。
できる限り標準的な回答を心がけておりますが、
分かりにくい内容があった場合には当院スタッフまでお問い合わせください。
腎臓は血液をろ過して老廃物や余分な水分を尿として体外に排出し、血液中の電解質バランスの調整、または血圧を調節する働きもある非常に重要な臓器ですが、腎臓の働きが大きく低下した時に透析が必要となります。
腎臓が悪くなる原因はさまざまですが、主に以下の原因が考えられます。
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生活習慣病
糖尿病、高血圧、高脂血症などにより、腎臓の血管を傷つけたり腎臓に負担をかけることで、腎臓の機能を徐々に低下させてしまいます。
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その他の病気等
- 慢性糸球体腎炎:腎臓の糸球体と呼ばれる部分が慢性的に炎症を起こし、機能が低下する病気です。
- 多発性嚢胞腎:腎臓に多くの袋状のものができ、機能が低下する遺伝性の病気です。
その他加齢に伴い、腎臓の機能が少しずつ低下することが考えられます。
腎臓病の治療は非常に複雑で、患者さんの年齢や身体の状態によって異なります。
腎臓病は早期発見・早期治療が最も大切です。医師の指示をしっかりと守り定期的な通院を行い、ご自身の病気についてよく理解した上で、積極的に治療に取り組むことが必要です。
腎臓の機能の低下度合によっていくつかのステージに分けることができます。
腎臓病のステージは、主に糸球体濾過量(GFR)という数値で判断されます。GFRは、腎臓が血液を濾過する能力を表す指標です。GFRが低いほど、腎臓の機能が低下していることを意味します。
一般的に、GFRが15mL/min/1.73m²以下になると腎臓の機能が著しく低下し、透析が必要となることが多いと言われています。この状態は慢性腎臓病のステージ5に該当します。
透析の治療法は大きく分けて2つの種類があります。
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血液透析
日本では最も一般的な透析方法です。機械を使って血液を体外に取り出し、人工の腎臓(ダイアライザー)で老廃物や余分な水分を取り除き、きれいになった血液を体に戻す方法です。
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腹膜透析
お腹の腹膜という膜を使って透析液を出し入れすることで血液を浄化する方法です。自宅で行うことができ、通院の負担が比較的少ないですが、毎日自分で透析液の交換などを行う必要があるため手間がかかります。
(※当院では維持的な腹膜透析の管理は行っておりません)
透析の通院頻度は、個々の患者さんの腎機能の状態や医師の判断によって異なりますが、一般的には週3回、1回4時間が標準とされています。
従来の血液透析は、血液と透析液の濃度差を利用して老廃物を除去する「拡散」という方法を利用していました。
オンラインHDFは、この拡散に加えて、血液をろ過して直接老廃物を除去する「濾過」という方法も併用することで、大量の体液を処理できるためより多くの種類の老廃物を効率的に除去できます。また、濾過によって血圧が安定しやすく低血圧になるリスクが軽減されることが期待できます。
I-HDF(間欠的補充型血液透析濾過)とは、補液を計画的かつ間欠的に繰り返す透析治療のことで、より効率的に老廃物を除去し、体内の水分バランスを安定させる治療法です。
透析液を一定の間隔(30分に1回)で血液回路に注入することで、透析膜の機能を維持し、透析効率を向上させます。また、透析液の注入により血管内の血液量が増加し、血圧の安定化や透析中の悪心・嘔吐などの症状の軽減が期待できます。さらに、末梢血管の拡張を促し末梢循環を改善する効果が期待されます。
透析は、腎臓の機能が低下した患者さんの命を支える大切な治療法ですが、同時に様々な辛さや負担を伴うこともあります。
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身体的な負担
- 毎回の透析で血管に針を刺すため、痛みを伴います。
- 体内の水分が過剰に抜けることで、だるさ、めまい、筋肉の痙攣などの症状が出ることがあります。
- 透析中に血圧が低下し、気分が悪くなることがあります。
- 透析液との反応で、体がかゆくなることがあります。
- 血管と動脈を繋いだシャントにトラブルが生じ、痛みや出血が起こることがあります。
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精神的な負担
- 週に3回の透析に通院するため、仕事や趣味など自由な時間が制限されます。
- 摂取できる塩分や水分量が制限されるため、食事や栄養状態の自己管理が必要となります。
- 数時間に及ぶ透析治療は患者さんにとって大きな負担となります。
血液透析が必要になった患者さんのために作られる血管のことです。血液透析治療を行うためには、十分な量の血液を体外に出し入れする必要があります。
透析シャントは、動脈と静脈を繋ぎ合わせることで血液の流れを良くし、透析に必要な血液量を確保するためのものです。シャントを作ることで、静脈が太く丈夫になり、透析の針を刺す際に血管が傷つきにくくなります。
透析ドライウェイト(DW)とは、透析患者さんが透析によって体液を最大限に減少させた状態の体重、つまり透析終了時の目標体重です。透析患者さんにとって理想的な体重で、体液バランスを保つことで血圧の安定や心臓への負担を軽減する効果があります。
ドライウェイトを設定するには、さまざまな医学的指標や患者の自覚症状、日常生活動作(ADL)、生活の質(QOL)などを考慮します。
また、ドライウェイトは常時固定のものではありません。患者さんの状態は常に変化するためドライウェイトも定期的に見直される必要があります。ドライウェイトを維持するためには、水分摂取量をコントロールすることが重要です。
透析患者さんの食事は、腎臓の機能が低下しているため、以下の栄養素の摂取量を調整することが一般的です。
- 塩分:高血圧やむくみ、心不全の原因となるため厳しく制限されます。
- カリウム:高カリウム血症を引き起こす可能性があるため制限されます。
- リン:骨の健康に影響を与えるため制限されます。
- 水分:体内に余分な水分がたまりやすいため制限されます。
腎臓は、体内の余分な水分やナトリウム(塩分の主成分)を尿として排出する働きをしています。しかし、腎機能が低下した透析患者さんは、この働きが十分にできず、体内にナトリウムが過剰に蓄積された結果、高血圧、むくみ、心不全などの合併症を引き起こすリスクが高まります。そのため、透析患者さんには、医師や栄養士から指示された範囲内で塩分を制限することが推奨されています。
主な制限される食品は以下のとおりです。
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カリウムを多く含む食品
バナナ、アボカド、キウイ、オレンジ、トマト、ほうれん草、海藻類など
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リンを多く含む食品
肉類、魚介類、乳製品、豆類、ナッツ類など
加工食品やインスタント食品にはリンが多く添加されていることがあります -
ナトリウム(塩分)
高塩分食品: 加工食品、漬物、醤油、味噌、ラーメンなど
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水分を多く含む食品
食事制限については必ず医師や栄養士に相談し、適切な食事指導を受けることが必要です。
透析治療を受けている方にとって食事管理は非常に重要です。特に、タンパク質とカロリーのバランスは健康維持に大きく影響します。
透析患者さんのためのタンパク質とカロリーの摂取目標
- タンパク質:一般的には、体重1kgあたり0.9~1.2gとされています。
- カロリー:体重1kgあたり30~35kcalが目安です。
透析患者さんにとって身体障害者手帳を持つことは様々な面でメリットがあります。
身体障害者手帳とは、身体に障害のある方が社会生活を送る上で必要な支援を受けることができるように手帳が発行される制度です。透析患者さんは「じん臓機能障がい」として1~4級の対象となります。
主なメリット
- 医療費助成の対象となります(1級)。
- 所得税や住民税の控除の対象となる可能性があります。
- 介護保険における要介護認定を受けやすくなる場合があります。
- 障害者向けの施設やサービスの利用が可能となります。
詳しくはお住まいの地域の市区町村役所にお問い合わせください。
以下の条件を満たせば「じん臓機能障がい」の1級に該当します。
- 内因性クレアチニンクリアランス値が10ml/分未満、⼜は⾎清クレアチニン濃度が8.0mg/dl以上
- ⾃⼰の⾝辺の⽇常⽣活活動が著しく制限されるか、⼜は⾎液浄化を⽬的とした治療を必要とするもの若しくは極めて近い将来に治療が必要となるもの
透析治療は高額な医療ですが、日本の医療保険制度では患者さんの経済的な負担を軽減するために様々な制度が設けられています。
一般的な自己負担額
- 1つの医療機関につき月額1万円(一定以上の所得がある人は2万円)が上限となります。これは、健康保険証と特定疾病療養受領書を提示することで適用される制度です。
- 自治体の助成制度: 住んでいる自治体によっては、独自の助成制度がある場合があります。
大阪府では1日あたり500円、1月あたり3,000円までを限度とする福祉医療費助成制度(重度障がい者医療)があります。 - 世帯の所得によって自己負担上限額が異なりますので、詳しくはお住まいの地域の市区町村役所にお問い合わせください。
人工透析が必要になる段階では腎臓病が相当に進行しており、その機能自体が回復することは難しいとされています。
透析日に休むことは、一般的には難しいとされています。
人間の腎臓は24時間365日休みなく働いているように透析も定期的に行う必要があります。透析の間隔があくと、体内に毒素や水分が溜まり、様々な健康問題を引き起こす可能性があります。
透析患者さんの通院時の支援として送迎サービスを行っている透析施設は多数あります。
当院でも通院透析の患者さんを対象に、ご自宅から病院まで無料送迎を行っております。お気軽にお問い合わせください。
透析患者さんにとって透析治療は生命維持に不可欠であるため、緊急時や災害に対してより一層の注意と準備が必要となります。
- まず身の安全を確保していただくことが最優先です。
- 可能な限り通院している透析施設に連絡を取り、施設の状況確認とともに指示を仰いでください。
- 通院中の施設が透析実施不可能な場合は、代替施設の確保や移動手段の確保など、透析治療を継続するための手段を検討する必要があります。
- 避難所に避難した場合は、ご自身が透析が必要であることを伝え必要なサポートを求めてください。
- 薬、非常食、水などを含む緊急持ち出し品を準備しましょう。特に食事については通常の非常食だけでなく、カリウムやリンなどの含有量に配慮した食品を用意しておくことをお勧めいたします。
透析を受けている患者さんにとって、掻痒感(かゆみ)は非常に悩ましい症状の一つです。
研究によって透析のかゆみの原因が以下のとおり分かってきました。
尿毒素の蓄積
腎機能低下に伴い尿毒素と呼ばれる老廃物が体内に蓄積することで皮膚を刺激し、かゆみの原因となることがあります。
乾燥
透析治療によって皮膚が乾燥しかゆみの原因となります。
リンの蓄積
リンが体内のカルシウムと結合して血管壁などに沈着し、かゆみを誘発します。
透析液との接触
透析液との接触によるアレルギー反応でかゆみが生じることがあります。
多くの透析患者さんが何らかの程度のかゆみを経験しており、そのために生活の質が大きく低下してしまうこともあります。現在は「透析のかゆみはきちんと治療すべき」との認識が広がっていますので、医師や医療スタッフに相談しながら幅広く治療を行うことを推奨いたします。
透析に使用される針は通常の注射針よりも太いため、皮膚を貫通する際の痛みはより強く感じられます。針が血管に到達する際や、血管壁に当たってしまう際に痛みを感じることがあります。また、穿刺部位の神経が刺激されることで痛みを感じる場合があります。
穿刺痛を軽減する対策として以下の方法があります。
- 穿刺前にテープタイプの局所麻酔薬を穿刺部位に貼る(リドカインテープ等)
- 穿刺前にクリーム状の麻酔薬を穿刺部位に塗る(エムラクリーム等)
- その他、穿刺部の冷却や温湿布の貼付、鎮痛剤を服用することもあります
透析治療は一般的に週3回、1回4時間が標準とされていますが、最低限守られるべき条件とも言われます。透析治療の効果は「透析量」により左右され、透析量は「1回あたり透析時間」や「週当たりの透析回数」に左右されます。透析時間を短くした上で現在と同じ治療効果を得るためには週当たりの透析回数を増やす「頻回透析」を実施する必要がありますが、対応可能な透析施設が少なく、現状の保険制度では月14回を超える血液透析は認められていませんのでかなり困難です。
そのため、透析の治療効果を得るためには透析時間を維持することが望ましいと言えます。