東大阪病院附属クリニック

Outpatient dialysis

外来透析

腎臓とは?(働き、代表的な腎臓疾患)

腎臓とは?(働き、代表的な腎臓疾患)

腎臓とは?

腎臓は尿をつくる器官で、腰よりやや高い位置の背中側に、背骨を挟んで左右1個ずつあります。ソラマメ型をした臓器です。一つが約150gほどです。

腎臓の働きとは?

腎臓には、体内の環境を最適な状態に整えるという大切な働き、カラダを常にバランスの取れた状態に維持する働きがあります。
腎臓は大きく分けると糸球体と尿細管に分けられます。糸球体には血液をろ過する働きがあります。
尿細管は糸球体でろ過されたろ液成分を調整する働きがあります。
アミノ酸やブドウ糖などの栄養素、ナトリウムやカリウム、リン、マグネシウムなどの様々なイオン(電解質)など必要なものまでろ過されないように、再吸収を行います。
約99%が再吸収され、残り1%が尿になります。
腎臓は、尿量や体液の成分の濃度調節を行い、体液のバランスを一定に保ち、身体のむくみを防いだり、神経の伝達や筋肉の動きをスムーズにします。
腎臓は、血液(赤血球)を作るホルモンや、血圧を調整するホルモン、骨を丈夫にするホルモンなどを作ります。

腎臓の主な機能

  • 老廃物の排出
  • 体内水分量の調節
  • 電解質のバランス調整
  • 血液を作成するホルモンの分泌
  • 血圧の調整
  • 骨を強くするためのビタミンDの作成

代表的な腎臓の疾患

  • 糖尿病性腎症

    糖尿病によって高血糖状態が持続し、腎臓の内部に張り巡らされている細小血管が障害を受けることで発症する。
    悪化すると腎不全に移行し、血液透析などが必要となることもある。糖尿病性腎症の初期段階は自覚症状はない。
    糖尿病性腎症の診断には、尿蛋白(アルブミン)や血中クレアチニンの測定が有効。
  • 慢性糸球体腎炎

    糸球体に慢性的な炎症が起こり、血尿や蛋白尿を認める病気を総称して糸球体腎炎と呼ぶ。
    慢性糸球体腎炎(慢性腎炎)は、血尿や蛋白尿が少なくとも1年以上持続するものをいう。
    慢性糸球体腎炎には、IgA腎症、腹性腎症、紫斑病性腎炎などの疾患が含まれる。
  • 腎硬化症

    高血圧が原因で腎臓の血管に動脈硬化を起こし、腎臓に障害をもたらす疾患。
  • ネフローゼ症候群

    尿に蛋白が大量に出てしまうために、血液中の蛋白が減り(低蛋白血症)、その結果、むくみが起こる疾患。
    むくみは、低蛋白血症が起こるために血管の中の水分が減って血管の外に水分と塩分が増えるために起こる。
  • 腎不全

    腎臓のろ過機能や再吸収機能が十分に働かなくなった状態。
    正常な時と比べて、腎臓の働きが30%以下になると腎不全という。
    進行すると様々な自覚症状があらわれ、放っておくと血液透析や腹膜透析、腎臓移植などをしなければならなくなる。
    [腎不全の症状]
    尿の異常(回数、量、色など)、動悸・息切れ、貧血、むくみ、高血圧、吐き気、発熱、頭や背中・腰・腹部の痛み、食欲不振、かゆみ
  • 急性腎不全

    数日から数週間で腎不全になる。治療によって改善する可能性がある。
  • 慢性腎不全

    数年かけてゆっくり腎不全になる。治療による改善は難しい。
  • 水腎症

    病名ではなく、病態を表している。
    腎臓は、尿をつくる腎実質の部分とそれがたまる腎盂という部分に分かれている。
    尿は腎盂から尿管に移行して、膀胱にたまってきます。
    膀胱が収縮することによって尿道から尿が出ますが、腎盂が膨れ上がって風船のように見える病態を水腎症という。
  • 多発性嚢胞腎

    腎臓に嚢胞(水がたまった袋)がたくさんでき、腎臓の働きが徐々に低下していく、遺伝性の病気。
  • 腎結石

    尿中のカルシウム成分などが結晶となり、これが集まって出来たもの。
    普段は無症状であっても、結石が動くと、突然の激痛を引き起こす。
  • 腎腫瘍

    腎臓に発生する腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍がある。
    良性腫瘍で頻度が高いのは腎血管筋脂肪腫、悪性腫瘍は成人に発生する腎細胞がんと小児に発生するウィルムス腫瘍が代表的。

透析療法とは?

透析療法とは?

透析とは糖尿病性腎症・慢性糸球体腎炎・腎硬化症などの病気で腎臓が上手く機能しなくなった場合に、血液中の余分な水分や老廃物を人工的に取り除き血液を綺麗にする働きを腎臓に代わって行う治療法のことです。
透析療法には、機械に血液を通して綺麗にする「血液透析(HD)」と患者さんご自身のお腹の膜を利用して血液を綺麗にする「腹膜透析(PD)」の2つの方法があります。
これらは、腎臓の働きを補うものであり、完全に代行できるものではありません。
当院では血液透析を実施しています。
血液透析は、血管に針を刺し、ポンプにより取り出した老廃物の多い血液を、ダイアライザーと呼ばれる人工腎臓に通し、カラダに溜まった余分な水分や老廃物を取り除く方法です。
これらの工程で、綺麗になった血液は体内に戻ります。
透析では腎臓の『老廃物の排出』、『体内水分量の調整』、『電解質のバランス調整』を担い、薬剤等を使用し、残りの機能をカバーします。

透析を開始するタイミングは?

透析を開始するタイミングは?

腎臓病は、気付きにくい病気です。慢性腎不全は自覚症状がないままゆっくりと病気が進みます。
気付いた時には、ひどくなっている事もあります。
腎臓病が進行して腎臓の動きが弱くなると腎不全といわれる状態になり、治療や管理を行っていても腎臓の機能低下が進行し、自分の腎臓で生命維持機能を保てなくなります。
このため腎臓の働きを補う透析療法が必要となります。
透析療法の開始時期は年齢や原疾患、血液データなどを総合的に判断し開始となります。
また、「尿毒症(腎不全で、カラダの恒常性が保てなくなり様々な症状が現れる状態)」の症状が出現したときは致死的な危険を伴います。

腎臓病の症状

  • 浮腫や心不全、肺水腫など循環器系症状
  • 食欲不振、嘔気おう吐などの消化器系症状
  • 不穏、意識障害などの精神神経の症状
  • 高カリウム血症、アシドーシスなどの電解質、酸塩基平衡異常
  • 手足のしびれ、むずむず神経症状
  • 身体のだるさ
  • 貧血症状・血がとまりにくい

透析治療の流れ

  1. 来院時に体重を測定し、過剰な水分量を計算します。
  2. 測定後ベッドに寝てもらい血圧等の状態を確認します。
  3. カラダから血液を取り出すための針、綺麗になった血液を体内に戻すための針の計2本の針を刺して治療を開始します。
  4. 通常治療は4時間前後で行います。
  5. 治療後は抜針し止血を行います。
  6. 最後に、目標とした体重まで水分が引けたか確認するため再度体重測定を行い、帰宅となります。

血液透析ろ過(HDF)について

HDF(英語のHemodiafiltrationの略)とは、通常の血液透析に加えて、ろ過によって老廃物の除去をする治療です。
ろ過を行う際に、補液を同時に行います。
HDFでは、補液した分の水を引く力を利用して、通常の血液透析(HD)では取り除きにくい大きめの老廃物(β2マイクログロブリン,α1マイクロ゙ロブリン等)を除去することができます。
大きめの老廃物が体内に溜まっていくと、痒みやむずむず足病、透析アミロイドーシス(関節痛や運動障害を引き起こす病気)等の原因となります。
治療効果は、上記の腎不全の合併症の改善に加えて、貧血、食欲不振等の改善にも期待できます。

オンラインHDF

大量の透析液(1回の治療で40~50L程度)を補液し、大量のろ過を行う比較的新しいHDFです。近年の主流の治療となってきています。
透析液が体内に入っても問題とならないウルトラピュアな透析液が必要になります。

オンラインHDF
当院の透析装置DCS-200i(日機装社製)
オンラインHDFの補液は透析濾過膜の前から行います。(前希釈方式) オンラインHDFの補液は透析濾過膜の前から行います。(前希釈方式)

当院では透析液清浄化ガイドラインに準じて、管理方法をマニュアル化し適切な管理を行っています。
月に1度、透析液の生菌数とエンドトキシン濃度の測定を行い、安全性の確認を行っています。
また、各透析コンソールにETRF(エンドトキシン除去フィルタ)の設置だけでなく、透析液供給装置にも微粒子除去フィルタ(微ET)を設置し透析液の清浄化に注力しています。

  • 透析液供給装置DAB-NX
    当院の透析液供給装置DAB-NX
    透析液を各機器へ送液するときに綺麗に
  • ETRF (エンド トキシン除去フィルタ)
    ETRF(エンド トキシン除去フィルタ)
    各機器で身体に入っていく前に綺麗に

オンラインHDFの利点

  • 血圧の安定

    HDFは透析中の血圧が下がりにくいと言われ、透析中の血圧維持を目的に行う事ができます。
    また、普段の血圧も安定し、血圧のお薬の減量にも繋がります。
  • 貧血の改善

    透析を行うと貧血傾向になりますが、改善することがあります。
  • かゆみ、イライラ感の減少

    老廃物の除去により症状が減少するという結果が報告されています。
  • 透析患者の予後が改善

    海外では生命予後を改善する効果があると報告されています。
  • 普段の透析で取り切れない老廃物の除去

    透析アミロイドーシスの原因とされるβ2ミクログロブリンを積極的に取り除き、合併症を予防します。
  • 食欲の改善

    老廃物の除去が優れているため、体調がよくなり食欲が改善することがあります。

I-HDFについて

I-HDFとは

I-HDF(間欠的補充型血液透析濾過)は、間欠的に補液を計画的に繰り返す透析治療のことで、透析中に起きる抹消循環障害の改善や血圧低下の抑制が期待される治療法です。

  • 間欠的補充(Intermittent Infusion):
    一定の間隔で補液を行うことを意味します。基本的には30分に1回補液が行われます。
  • 血液透析濾過(Hemodiafiltration):
    透析液と補液を組み合わせて行う治療法です。

I-HDFで期待できる臨床効果

  1. 血圧低下予防:
    十分に注意しながら除水をしても血圧が落ちてしまう患者さんには、一定の時間ごとに補充液が入るようにプログラムを行って除水による循環血液量の減少を抑制し、血圧を維持しながらHDFを実施します。
  2. 末梢循環障害の緩和:
    通常の透析では、治療の進行に伴い水分が減少することで小さな血管がさらに収縮し、血液や物質の流れが悪くなると考えられますが、I-HDFでは、間欠的に補充液が入ることで、細くなった血管がまた開いて体の深部から老廃物を掻き出す効果も期待できるとされています。
  3. 膜性能の劣化抑制:
    補液による膜洗浄効果で、透析膜の内側に付着した老廃物やタンパク質を洗い出し、膜性能の経時的劣化を防ぎます。

シャントについて

ブラッドアクセスについて

ブラッドアクセスとは透析を行うために腕等に作成する血液の出入り口となる場所です。
ブラッドアクセスには種類があり下記のように分けられます。

ブラッドアクセス

人工透析では高流量の血液を人工腎臓に循環させる必要があるため十分な血液流量を確保できるブラッドアクセスの作成が必須となります。

各ブラッドアクセスについて

シャントとは
  • シャントとは

    シャントとは腕の中の動脈と静脈を繋げた物の総称です。
    人工透析は1分間に200mlほどの血液を循環させる必要があるため普通の静脈では血液流量を確保できません。
    そこで血液流量の多い動脈を繋げることで静脈内に血液をバイパスし、人工透析が可能な高流量を得ることができます。
    しかし、シャント作成前とは腕の血液の流れが変わるため心臓に負荷がかかったり、スチール症候群※といったトラブルが発生する場合があります。
    [スチール症候群]
    シャントを作成した後に、シャントに血流が取られ、指先に血液が流れず、痛みや冷えの発生、白くなったり紫色になったりすることを言います。
  • 内シャント

    腕の中の動脈と静脈を繋げたものです。腕の中で繋げているので内シャントといいます。
    内シャントは現在最も一般的なブラッドアクセスとなります。
    その中でも自己血管を用いたものをAVF、人工血管を用いたものをAVGといいます。
    基本的に自己血管を用いて内シャントを作ります(AVF)がシャントに適した血管がない場合などは人工血管を使用します(AVG)。
    しかし、AVGはAVFに比べ感染しやすいという欠点があるので管理には注意が必要です。
  • 動脈表在化

    血管が細い、動静脈の位置関係、心臓の状態等の理由で内シャントを作るのが難しい場合に使用されます。
    もともと動脈は人工透析が可能な血液流量を持っていますが腕の深くに埋没しているため穿刺が困難です。
    そこで動脈を皮下まで引き上げることにより動脈への穿刺が埋没している時と比較して容易になります。
    またシャントではないので血流が変わらず心臓に負担がかからないなどの利点があります。
    しかし、動脈に直接穿刺することは大量出血のリスクもあります。

シャントトラブルとは?

透析を行っていると様々な原因で血管内に血栓ができたり血管の内側が狭くなり、透析を行うことが困難になってしまうことがあります。

シャントトラブルの例

  • 血栓によって血管の内側が詰まる(閉塞)
  • 血管が狭くなって血液の量が低下する(狭窄)
  • 血管が狭くなり腕全体が腫れる
  • 感染
…など

シャントトラブルが発生すると透析を行うことが困難になる場合があります。
そうならないためには早期対応・早期処置を行う必要があります。

当院ではシャントトラブルに対してエコー検査などにより患者さんのシャントの状態の把握を行っております。
必要に応じて東大阪病院または近隣のシャント専門の医療機関と連携して経皮的血管形成術(PTA)を行っています。シャントPTAでは経皮的にバルーンで拡張、血栓の吸引を行い、通常の透析が可能になるように血管内の治療を行います。

吸着式潰瘍治療法について

当院では必要に応じて閉塞性動脈硬化症に対する吸着式潰瘍治療法を施行しております。

特殊血液浄化(血液吸着):
1.5~2時間の治療を一連の治療として24回まで保険適応で行います。

透析患者さんの場合には原則として非透析日に週2回のペースで行います。
治療をご希望の方は事前にお問い合わせください。

吸着式潰瘍治療法に関する詳細は下記リンクをご参照ください(東大阪病院のホームページに遷移いたします)。
https://www.yurin.or.jp/treatment4
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